グレイス・オーヴェルヌ

麗しき啖呵!悪役令嬢グレイス、町に喝!

町の学園前、ささやく声

この町には、人知れず涙を飲む少女がいた――
けれども、その涙に気づく一筋の風がある。サクラ色の轍がそれを告げる。

学園前、下を向いて歩く美羽。

また一人でいるよ…

なんか空気読めないんだよね~

木陰のサクラ、トランクが開く

静かに現れるコスプレクイーン、トランクの中から黒と紫のドレスを取り出す。

この空気、まるで令嬢劇の学園舞踏会前のざわめき…。
なら、今必要なのは――悪役令嬢の登場ってわけね。

変身!ドレスが舞い、髪を巻き上げ、扇子を片手に。

ごきげんよう、庶民の皆様。華麗に失礼いたしますわ。

生徒会の部室、乗り込むグレイス

美羽を追い詰める生徒たちの中へ。

……何のつもりですか?外部の方ですよね?

黙りなさい、この貧相な会議劇場の主役たち。
あなた方の“空気”という名の陰湿は、実に退屈ですわ。

一瞬、凍りつく空気。

悪役というのはね、ただ意地悪をする者ではなく、
本当に大切な者のために嫌われ役を買って出る者のことを言うのです。

美羽の涙と、小さな変化

美羽の手を取り、グレイスがそっと語りかける。

あなたの信念を“浮いてる”と言う者たちに、合わせる必要はないの。
あなたらしく、堂々とおやりなさいな。

美羽、そっと顔を上げる。

……うん。ありがとう…グレイスさま…

再びサクラの車内、優雅なる去り際

気づけば風は変わっていた。
グレイス・オーヴェルヌ――その名の余韻だけを残して。

車内、ウィッグを外すコスプレクイーン。

悪役令嬢って、意外と、心地いいものね…さて、次の町へ行くとしましょうか。

次回予告「静かなる祈り、フリーレンに宿る魔法の記憶」