マーメイド

歌え、海より深く──コスプレクイーン・マーメイドの約束

港町・灯台のふもと

青い海が広がる港町。日産サクラが静かに停まる。

海の匂い……今日は、波が語りたがってるみたい。

柔らかな笑みのクイーン。

スカートの中に尾ひれのような光るスパンコール。どこか非現実的な雰囲気。

蓮が岩場でひとり佇んでいる

風が吹き、波がざわつく中、蓮が遠くを見つめる。

おまえなんか、もう……好きじゃないよ……海なんか……

海に向かって投げるように言う。

そこへクイーンが、岩場に立つ。尾ひれが風に揺れ、まるで本物の人魚姫。

でも、君の声は、“助けて”って言ってるように聞こえたよ？

蓮、驚いて振り向く。

夜の灯台・祖母の語り

ランプの灯りの下、祖母がクイーンを見つめる。

昔、あの岩に立って歌った“海の娘”がいたのさ。
彼女の歌は、船を導き、迷子の心を見つけてくれた。

じゃあ、私も今日だけその“海の娘”にさせてもらおうかな。

蓮が崩れる

雨の中、蓮が桟橋で泣いている。

おれがもっと早く助けてれば…妹は……！

そこへ現れるクイーン。雨の中、傘もささずに立つ。

ねぇ、知ってる？
“人魚の歌”は、聴いた人の涙を海に返すんだって。

クイーンが静かに歌い始める。波の音に溶けるような、優しい歌。

夜明け・海辺

蓮が眠っている。目を覚ますと、海が静かで美しく輝いている。

……きれいだな。海って、こんなに…青かったっけ……？

近くにクイーンの姿はない。海風の中、微かに歌声が残っている。

エピローグ

町の人たちが海辺に集まり、灯台に灯がともる。

また現れたのさ、“海の娘”。
だけど今度は──コスプレしてただけ、なんだってさ。

みんなが笑う。

サクラが走り去る。
後部ミラーに映るのは、微笑むマーメイドクイーン。

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