メーテル

旅人メーテル、哀しみを乗せて——コスプレクイーン、蒸気と記憶の町へ

町外れの保存館前

サクラが坂道を登って止まり、クイーンが降り立つ。

人は記憶を捨てて生きられない…でも、捨てたふりをするのは簡単なの

コートの裾をなびかせ、静かに保存館の門をくぐる。

保存館の中

古い蒸気機関車が並び、埃をかぶっている。

ここは、じいちゃんが命をかけて整備してきた場所なんだ…。
なのに、町はもう“ただの鉄くず”って…

鉄も人の心も、熱で動く。なら、心の火をもう一度灯してみましょうか

夜、保存館前広場

クイーンが人々を呼び集め、真っ黒な蒸気機関車の前に立つ。

あなたが最後に、汽笛を聞いたのはいつ?
風の中の音が、誰かの旅立ちを見送っていたことを…忘れていませんか?

機関車の煙突から、白い蒸気がふわりと立ち上がる。

回想

クイーンの語りとともに、プロジェクターに映される祖父の整備風景。

この子は、人の人生を乗せて走る列車さ。速さじゃない、魂を運ぶんだよ

ユウタの目に涙が光る。

町の役場・堂島との対峙

施設の維持費はもう限界だ。未来のためには前を向くしかない!

未来に進むためにこそ、過去が必要なんです。
レールがあるから列車は走れる。記憶を切っては、前に進めません

奇跡の走行

保存館のスタッフと町の子どもたちの協力で、機関車の簡易走行が実現。

見て! 走ってるよ! じいちゃんの機関車が!!

汽笛が夜空に響く。町の人たちが黙って拍手を送る。

別れの朝

サクラの助手席に帽子と銀河鉄道の模型が置かれている。

私は、誰かの旅立ちにそっと寄り添うだけ。
でも、それが新しい旅の始まりになるなら…きっと、意味はあるわね

朝霧の中、サクラが静かに町を離れる。

蒸気の向こうに見えたのは、懐かしくも温かい記憶。
誰かの大切なものを守るため、彼女はまた別の町へ——

コスプレクイーン、次の旅路へ