玉結びと玉止めのヒミツ

放課後の裁縫部。ひまりは部室に入り、昨日練習した針と糸の感触を思い出しながら席についた。

よしっ!今日も頑張るぞー!

ひまりが気合を入れると、田村先生が微笑みながら近づいてきた。

やる気があって素晴らしいわね、ひまりちゃん。今日は、”玉結び”と”玉止め”をしっかり覚えてもらうわよ

え?昨日やった玉結びと何か違うんですか?

ひまりは首をかしげる。

ふふ、それはね……実際にやってみればわかるわよ

先生が布と糸を手に取り、優しく説明を始めた。


まずは、昨日やった玉結びね

先生は針に糸を通し、端の部分を指でくるくると巻いてから、きゅっと引っ張る。

これが玉結び。針に糸を通した後に作る結び目で、縫い始めるときに糸が抜けないようにするためのものなの

うんうん!昨日やったやつですね!私もやってみます!

ひまりも針を持ち、慎重に糸を指に巻いて引っ張る。

……できたっ!

うん、上手よ。じゃあ次に、”玉止め”をやってみましょうか


玉止めってなに?

玉止めは、縫い終わりにする結び目のことよ。縫った糸がほどけないように、最後にしっかり止めるの

へぇ~!じゃあ、最初は玉結びで、最後は玉止めってことですね!

そういうこと!

先生はすらすらと並縫いをしてから、最後のところで糸を引っ張り、少し余裕を持たせる。そして、その部分に針をくぐらせ、輪っかを作って引き締める。

こうやって、小さな結び目を作るのよ

ひまりは興味津々で覗き込む。

なんか……針をくぐらせてからキュッとするの、魔法みたいですね!

ふふ、じゃあひまりちゃんもやってみましょうか?


ひまりはまず、昨日覚えた並縫いを復習しながら縫い進める。

よし、縫えた!じゃあ、ここで玉止め……

先生のやり方を思い出しながら、糸を引っ張り、針をくぐらせて輪を作る。しかし――

あれ!?結び目が遠くなっちゃった!?

よく見ると、結び目が布から離れたところにできてしまい、なんだか不格好になっている。

うぅ……せっかくうまく縫えたのに……

大丈夫よ。コツはね、針をくぐらせた後に、輪の部分を布に近づけてからゆっくり引っ張ること

なるほど……!

ひまりはもう一度挑戦する。今度は、結び目が布のすぐそばにできるように慎重に引っ張る。

……あっ!先生、できました!

うん、とても上手よ。玉結びと玉止め、しっかり覚えたわね


裁縫部の部活が終わる頃、ひまりは自分の縫った布をじっと見つめる。

縫い始めと縫い終わりにちゃんと結び目を作るって、なんだか”お話”みたいですね

お話?

はい!最初に玉結びで始まって、縫っていくのがストーリー。そして最後に玉止めで終わる……物語も最初と最後が大事だから、なんだか似てるなぁって思って!

先生は少し驚いた顔をした後、にっこり微笑んだ。

素敵な考え方ね。裁縫も、ひと針ひと針が物語を紡ぐようなものかもしれないわね

ひまりは嬉しそうに頷く。

(よし!次はもっときれいに縫えるように頑張ろう!)

そんな決意を胸に、ひまりは今日も裁縫の世界を一歩進んでいくのだった。


次回予告

次は”ボタン付け”に挑戦!?上手にできるかな?

皆も、ひまりと一緒に玉結びと玉止めを練習してみてね!

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