裁縫との出会い

プロローグ:ひまりの第一歩

桜井ひまりは、学校の放課後、いつものようにアニメのDVDを手に取っては、まるで自分がその世界の一員になったかのように、心躍らせていた。

しかし、何度も見ているアニメの中でも、ひまりの胸に最も強く響いたのは、「コスプレクイーン」として活躍する魔法少女のキャラクターだった。

私も、いつかこんな風になりたい…

ひまりは、鏡の前で自分を映しながらぼんやりと夢を描いていた。しかし、現実はそう甘くなかった。周りの友達や先輩たちは、既に手作りのコスプレ衣装を見事に作り上げ、イベントでその才能を披露している。その姿を見て、ひまりはどうしても自分に自信が持てないでいた。

ある日の放課後、ひまりはうっかり別館の通り道を歩いていた。

見慣れない扉を見つけた。扉には「裁縫部」という小さな看板が掲げられていた。ふと気になったひまりは、ドアを少しだけ開けて中を覗いてみる。そこには静かな部屋と、いくつかの裁縫道具が整然と並んでいた。

こんなところに裁縫部が…?

部屋の中で何かを縫っている姿が見える。ひまりは勇気を振り絞って、その部屋に足を踏み入れた。

すみません、ここって裁縫部ですか?

部屋の中にいたのは、優しげな雰囲気を持つ家庭科の先生だった。先生はひまりを見て、温かい微笑みを浮かべながら声をかけた。

はい、裁縫部ですよ。
あら、あなたは桜井ひまりさん?最近、アニメのコスプレにとっても興味を持っているって誰だったから聞いたわ

ひまりは少し驚きながらも、恥ずかしそうに頷いた。

ええ、そうなんです。でも…私は裁縫なんて全くできなくて、どうしていいのかもわからなくて…

大丈夫よ、ひまりちゃん。誰だって最初はわからないものよ。私がしっかり教えてあげるわ。

先生はそう言いながら、手元にあった布と針をひまりに差し出した。

まずは針と糸を使ってみましょう。慣れるまで、何度でも一緒にやってみよう。

ひまりは初めて触る針と糸に戸惑いながらも、先生の優しい手のひらを感じながら、ゆっくりと縫い始めた。

見てごらん。こんな風に、糸と針を使って形ができていくのが面白いでしょ?

ひまりの顔に少しずつ笑顔が浮かび始めた。針を持つ手が少しずつ安定してきたことを感じて、心が温かくなるのを感じた。

これが裁縫の楽しさなんだ…!

その瞬間、ひまりは新たな世界に足を踏み入れたことを実感した。そして、これからたくさんの作品を作り上げ、夢に向かって一歩一歩進んでいく決意が胸に湧き上がってきた。

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